パラリンピックシンボルについて
パラリンピックのシンボルマーク、通称「スリー・アギトス(Three Agitos)」について解説します。オリンピックの五輪マーク(オリンピックシンボル)と比べると歴史は新しく、現在の形になるまでに「IOC(国際オリンピック委員会)からのクレーム」によってデザインの変更を余儀なくされたという、意外な苦労と進化の歴史を持っています。
1. デザインと形の意味:ラテン語の「私は動く」
赤、青、緑の3色の三日月(あるいはブーメランや勾玉)のような形が、中央の1点に向かって集まるように、かつ円を描くように配置されています。
- 「アギトス(Agitos)」の意味 この特徴的な形は「アギト」と呼ばれます。アギト(Agito)とはラテン語で「私は動く(I move)」という意味です。 困難な障がいを抱えていても、決して諦めずに限界に挑戦し続け、常に前へ進み続ける(動く)パラリンピアンたちの強い意志と躍動感を表現しています。
- 中央に集まるデザインの意味 3つのアギトが中心に向かって集まっているのは、 「世界中からパラアスリートが一つの場所に集い、競い合うこと」 を象徴しています。
- 「赤・青・緑」の3色の意味 オリンピックの五輪マークの6色(白背景含む)と同じような理由から選ばれています。 赤、青、緑の3色は、 「世界中の国旗の中で最も多く使われている3色」 だからです。 特定の大陸を指すのではなく、世界中のすべての国と地域を表現(普遍性)しています。
2. スリー・アギトスの歴史:IOCとの対立から生まれた独自性
パラリンピックのシンボルは、大会の歴史とともに3回も大きくデザインを変えています。その背景には、オリンピックとの複雑な関係がありました。
① 初代シンボル:韓国の「5つの太極(テグク)」(1988年〜1994年) パラリンピックに初めて公式なシンボルマークが登場したのは、1988年のソウル大会でした。この時、韓国の伝統的な模様である 「太極(テグク=勾玉のような形)」を5つ組み合わせたマーク が作られました。 色はオリンピックと同じ「青・黄・黒・緑・赤」の5色で、五輪マークと同じように「上段に3つ、下段に2つ」並んでいました。
② IOCからのクレームによる「3つ」への変更(1994年〜2004年) しかし、この初代マークに対し、IOC(国際オリンピック委員会)から「五輪マーク(オリンピックシンボル)に似すぎている。商標権の観点からも混同を招くため変更してほしい」と要望が入りました。 これを受け、IPC(国際パラリンピック委員会)は色と数を減らすことを決定。1994年のリレハンメル大会から 「赤・青・緑の3色の太極(テグク)」 に変更された第2世代のシンボルが使われるようになりました。
③ 独自のアイデンティティ「アギトス」の誕生(2004年〜2019年) 21世紀に入り、IPCは「オリンピックの影に隠れるのではなく、パラリンピック独自の強烈なアイデンティティ(哲学)を示すマークが必要だ」と考えました。 2003年に世界的広告代理店ショルツ&フレンズの協力を得て現在の 「スリー・アギトス」 がデザインされました。 これが2004年のアテネ大会の閉会式で世界に向けて初お披露目され、パラリンピックを象徴する完全なオリジナルマークが定着しました。
④ 誰もが見やすい「最新アップデート」(2019年〜現在) 2019年、IPCはアギトスのデザインをさらにアップデートしました(東京2020大会などから適用)。 形がより幾何学的に整えられて色がより明るく鮮やかな赤・青・緑に変更されました。これはデジタル画面(スマホなど)で見た際に最も美しく映えるようにするためです。
3. 「パラリンピック」という言葉の本来の意味
シンボルの進化は、「パラリンピック」という言葉自体の意味の変化とも深く連動しています。
- 昔の意味:「下半身不随のオリンピック」 パラリンピックの起源は、1948年にイギリスのストーク・マンデビル病院で、車いすの傷痍軍人(戦争で負傷した兵士)たちのリハビリのために開かれたアーチェリー大会です。 そのため、当初は**「Paraplegia(パラプレジア=下半身不随)」+「Olympic(オリンピック)」**の造語でした。
- 現在の意味:「もう一つのオリンピック」 その後、出場できる障がいの種類(視覚障がい、切断、脳性まひ、知的障がいなど)が拡大したため、「下半身不随」という由来は実態に合わなくなりました。 そこで現在では、**ギリシャ語の「Para(パラ=並行して、もう一つの)」+「Olympic」**という解釈に公式に再定義されています。 オリンピックと対等な「もう一つのオリンピック」へと進化を遂げたことが、独自のアギトス・マークにも現れています。
4. 知っておきたい豆知識(パラならではの工夫)
- モットーは「Spirit in Motion(スピリット・イン・モーション)」 IPCの公式モットーです。「心(精神)は常に動き続ける」という意味であり、シンボルマークの「アギト(私は動く)」の哲学をそのまま言葉に表したものです。 身体の一部が動かなくても、精神の躍動は誰にも止められないという力強いメッセージです。
- 「色覚多様性」に配慮された最新カラー 2019年にアギトスの色が明るく変更された際、パラリンピックらしく「アクセシビリティ(誰にでも使いやすい・見やすいこと)」が極めて重視されました。 色覚障がい(特定の色が見分けにくい特性)を持つ人々にとっても、3つのアギトスが背景からくっきりと判別できるように、科学的なテストを繰り返して新しいトーンの赤・青・緑が選ばれています。
- 大会ごとのエンブレムとの組み合わせ オリンピックと同様、開催都市の大会エンブレム(東京大会の組市松紋や、パリ大会の金メダルと唇を合わせたロゴなど)の下には、必ずこの「スリー・アギトス」が配置されます。 現在ではIOCとIPCは強固な協力協定を結んでおり、かつてのような「似すぎている」という対立はなく、両大会は完全に一体となって開催されています。
以上のように、パラリンピックシンボル「アギトス」は、オリンピックとの差別化という苦難の歴史から生まれ、障がいを乗り越えて「動き続ける(I move)」という人間の精神の極限の美しさを、色覚への配慮といった現代的な優しさとともに表現した、最高傑作のシンボルなのです。
素材について
パラリンピックのシンボルマーク、通称「スリー・アギトス(Three Agitos)」について解説します。オリンピックの五輪マーク(オリンピックシンボル)と比べると歴史は新しく、現在の形になるまでに「IOC(国際オリンピック委員会)からのクレーム」によってデザインの変更を余儀なくされたという、意外な苦労と進化の歴史を持っています。
1. デザインと形の意味:ラテン語の「私は動く」
赤、青、緑の3色の三日月(あるいはブーメランや勾玉)のような形が、中央の1点に向かって集まるように、かつ円を描くように配置されています。
- 「アギトス(Agitos)」の意味 この特徴的な形は「アギト」と呼ばれます。アギト(Agito)とはラテン語で「私は動く(I move)」という意味です。 困難な障がいを抱えていても、決して諦めずに限界に挑戦し続け、常に前へ進み続ける(動く)パラリンピアンたちの強い意志と躍動感を表現しています。
- 中央に集まるデザインの意味 3つのアギトが中心に向かって集まっているのは、 「世界中からパラアスリートが一つの場所に集い、競い合うこと」 を象徴しています。
- 「赤・青・緑」の3色の意味 オリンピックの五輪マークの6色(白背景含む)と同じような理由から選ばれています。 赤、青、緑の3色は、 「世界中の国旗の中で最も多く使われている3色」 だからです。 特定の大陸を指すのではなく、世界中のすべての国と地域を表現(普遍性)しています。
2. スリー・アギトスの歴史:IOCとの対立から生まれた独自性
パラリンピックのシンボルは、大会の歴史とともに3回も大きくデザインを変えています。その背景には、オリンピックとの複雑な関係がありました。
① 初代シンボル:韓国の「5つの太極(テグク)」(1988年〜1994年) パラリンピックに初めて公式なシンボルマークが登場したのは、1988年のソウル大会でした。この時、韓国の伝統的な模様である 「太極(テグク=勾玉のような形)」を5つ組み合わせたマーク が作られました。 色はオリンピックと同じ「青・黄・黒・緑・赤」の5色で、五輪マークと同じように「上段に3つ、下段に2つ」並んでいました。
② IOCからのクレームによる「3つ」への変更(1994年〜2004年) しかし、この初代マークに対し、IOC(国際オリンピック委員会)から「五輪マーク(オリンピックシンボル)に似すぎている。商標権の観点からも混同を招くため変更してほしい」と要望が入りました。 これを受け、IPC(国際パラリンピック委員会)は色と数を減らすことを決定。1994年のリレハンメル大会から 「赤・青・緑の3色の太極(テグク)」 に変更された第2世代のシンボルが使われるようになりました。
③ 独自のアイデンティティ「アギトス」の誕生(2004年〜2019年) 21世紀に入り、IPCは「オリンピックの影に隠れるのではなく、パラリンピック独自の強烈なアイデンティティ(哲学)を示すマークが必要だ」と考えました。 2003年に世界的広告代理店ショルツ&フレンズの協力を得て現在の 「スリー・アギトス」 がデザインされました。 これが2004年のアテネ大会の閉会式で世界に向けて初お披露目され、パラリンピックを象徴する完全なオリジナルマークが定着しました。
④ 誰もが見やすい「最新アップデート」(2019年〜現在) 2019年、IPCはアギトスのデザインをさらにアップデートしました(東京2020大会などから適用)。 形がより幾何学的に整えられて色がより明るく鮮やかな赤・青・緑に変更されました。これはデジタル画面(スマホなど)で見た際に最も美しく映えるようにするためです。
3. 「パラリンピック」という言葉の本来の意味
シンボルの進化は、「パラリンピック」という言葉自体の意味の変化とも深く連動しています。
- 昔の意味:「下半身不随のオリンピック」 パラリンピックの起源は、1948年にイギリスのストーク・マンデビル病院で、車いすの傷痍軍人(戦争で負傷した兵士)たちのリハビリのために開かれたアーチェリー大会です。 そのため、当初は**「Paraplegia(パラプレジア=下半身不随)」+「Olympic(オリンピック)」**の造語でした。
- 現在の意味:「もう一つのオリンピック」 その後、出場できる障がいの種類(視覚障がい、切断、脳性まひ、知的障がいなど)が拡大したため、「下半身不随」という由来は実態に合わなくなりました。 そこで現在では、**ギリシャ語の「Para(パラ=並行して、もう一つの)」+「Olympic」**という解釈に公式に再定義されています。 オリンピックと対等な「もう一つのオリンピック」へと進化を遂げたことが、独自のアギトス・マークにも現れています。
4. 知っておきたい豆知識(パラならではの工夫)
- モットーは「Spirit in Motion(スピリット・イン・モーション)」 IPCの公式モットーです。「心(精神)は常に動き続ける」という意味であり、シンボルマークの「アギト(私は動く)」の哲学をそのまま言葉に表したものです。 身体の一部が動かなくても、精神の躍動は誰にも止められないという力強いメッセージです。
- 「色覚多様性」に配慮された最新カラー 2019年にアギトスの色が明るく変更された際、パラリンピックらしく「アクセシビリティ(誰にでも使いやすい・見やすいこと)」が極めて重視されました。 色覚障がい(特定の色が見分けにくい特性)を持つ人々にとっても、3つのアギトスが背景からくっきりと判別できるように、科学的なテストを繰り返して新しいトーンの赤・青・緑が選ばれています。
- 大会ごとのエンブレムとの組み合わせ オリンピックと同様、開催都市の大会エンブレム(東京大会の組市松紋や、パリ大会の金メダルと唇を合わせたロゴなど)の下には、必ずこの「スリー・アギトス」が配置されます。 現在ではIOCとIPCは強固な協力協定を結んでおり、かつてのような「似すぎている」という対立はなく、両大会は完全に一体となって開催されています。
以上のように、パラリンピックシンボル「アギトス」は、オリンピックとの差別化という苦難の歴史から生まれ、障がいを乗り越えて「動き続ける(I move)」という人間の精神の極限の美しさを、色覚への配慮といった現代的な優しさとともに表現した、最高傑作のシンボルなのです。
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詳細データ・リンク
| 素材名 | パラリンピックシンボル |
|---|---|
| キーワード | パラリンピックク, 旗 |
| 制作者 (Creator) | 3kaku-K |
| 著作権 (Copyright) | 3kaku-K |
| クレジット (Credit) | freesozai.jp |