ニュージーランドの国旗について
ニュージーランドの国旗、通称「ニュージーランド・エンサイン(New Zealand Ensign)」について、そのデザインの意味、オーストラリアとの激しい「パクリ論争」、そして「国費を約20億円も投じて国旗を変えようとした歴史的な国民投票」まで、詳しく解説します。イギリスの伝統を受け継ぎつつも、南半球の美しい星空を刻んだこの旗は、近年その存在意義そのものが国を二分する大議論の的となりました。
1. デザインと形の意味:南半球の赤い星
深い青色の背景(ブルー・エンサイン)に、左上にイギリス国旗、右側に南十字星が描かれています。
- ブルー(背景の青色) ニュージーランドを囲む 「美しく青い海」 と、澄み渡る 「青空」 を表しています。
- 左上の「ユニオンジャック」 かつてイギリスの植民地であったという歴史的な結びつきと、現在もイギリス連邦(コモンウェルス)の一員であることを示しています。
- 右側の「南十字星(サザンクロス)」
南半球でしか見ることができない星座であり、ニュージーランドが 「南太平洋に位置する国」 であることを象徴しています。
- 星の色と形:ここが非常に重要なポイントです。ニュージーランドの南十字星は、 「白いフチ取りのある、赤い五芒星(5つの角を持つ星)」 が 4つ 描かれています。これは、実際の南十字星を構成する星の中でも、特に明るい4つの星だけを抜き出したものです。
2. 国旗の歴史と由来:実はオーストラリアより「先輩」
ニュージーランドの国旗は、現在の形になるまでにいくつかの変遷を経ています。
① 最初の国旗は全く違うデザインだった(1834年) ニュージーランドがイギリスの直轄植民地になる前、先住民マオリの首長たちが集まって選んだ 「ニュージーランド連邦部族旗」 というものが存在しました。白地に赤い十字架があり、左上に青地に4つの白い星が描かれたもので、これがニュージーランド初の公認旗でした。
② 現在のデザインの誕生(1869年) 1865年、イギリス政府は植民地の船に対し「青地の旗(ブルー・エンサイン)に、その植民地独自のバッジ(紋章)をつけて掲げること」を義務付けました。最初は単に「NZ」という文字を入れていましたが、1869年に海軍将校のアルバート・マーカムの提案により、現在の「赤い南十字星」のデザインが採用されました。これが現在の国旗の直接のルーツです。
③ 正式な国旗としての制定(1902年) その後、南アフリカで起きたボーア戦争(1899年〜)にニュージーランド兵が従軍した際、この旗が愛国心のシンボルとして広く使われるようになりました。そして 1902年、「ニュージーランド・エンサイン法」が可決され、正式に国家の国旗として制定 されました。
3. オーストラリアとの「激似・パクリ論争」
オーストラリアの国旗の解説でも触れましたが、両国の国旗は世界で最も見分けがつきにくいことで有名です。
- どう見分けるか?
- ニュージーランド:星は「赤色で白フチ」「五角星」「星の数は4つ」「左下に大きな星はない」。
- オーストラリア:星は「真っ白」「七角星」「星の数は5つ(+左下に大きな星が1つ)」。
- 「パクったのはオーストラリアだ!」 2018年、ニュージーランドのウィンストン・ピーターズ首相代行(当時)が 「オーストラリアは我々の国旗をパクった。彼らはデザインを変えるべきだ」 と発言し、国際ニュースになりました。 実は、オーストラリアが現在の国旗デザインをコンペで選んだのは1901年ですが、 ニュージーランドが現在の国旗を使い始めたのは1869年、法律で国旗にしたのは1902年 です。オーストラリアが法律で今の国旗を正式に確定させたのは1954年であるため、「歴史的には我々の方がずっと先だ!」というニュージーランド側の強いプライドがあります。
4. 巨額の費用をかけた「国旗変更・国民投票」(2015〜2016年)
ニュージーランドの国旗を語る上で絶対に外せないのが、近年起きた 「国旗を変えるべきか否か」を問う国家を挙げた大論争 です。
① なぜ変えようとしたのか? 当時のジョン・キー首相が、以下の理由から国旗の変更を強く推し進めました。
- オーストラリア国旗と似すぎていて、国際社会で間違えられすぎる。
- 「ユニオンジャック」は過去のイギリス植民地支配の象徴であり、多文化社会であり先住民マオリの歴史を持つ現代のニュージーランドにふさわしくない。
- ニュージーランドの真のシンボルである 「シルバー・ファーン(銀シダ)」 を国旗にすべきだ。
② 新デザインの公募と熱狂 政府は約2,600万NZドル(当時のレートで約20億円)もの国費を投じて、新しい国旗のデザインコンペと2回の国民投票を実施しました。 全国から1万点以上のデザインが寄せられ、「目からビームを出すキウイ鳥(キーウィ)」などのネットミーム的な面白デザインも話題になりました。
③ 国民投票の結果:現状維持 最終決戦は、「現在の国旗」vs「シルバー・ファーンと南十字星を描いた新デザイン(黒・白・青)」の一騎打ちとなりました。 結果は、 「変更反対(現在の国旗を維持)」が56.6% 、「変更賛成」が43.2%となり、 現在の国旗が存続することになりました。 「かつての戦争でこの旗の下で戦って死んでいった兵士への冒涜だ」という退役軍人たちの強い反対や、「歴史的なシンボルを変える必要はない」という保守的な意見、そして「変更にかかる莫大なコストの無駄遣い」への批判が上回ったためです。
5. 知っておきたい豆知識(トリビア)
- スポーツ界の国旗「シルバー・ファーン」 ラグビーの最強代表チーム「オールブラックス」のユニフォームで有名な、 黒地に白いシダの葉(シルバー・ファーン) を描いた旗は、スポーツの応援などで「事実上のもう一つの国旗」としてニュージーランド国民に熱狂的に愛されています。真っ黒な旗は強さと誇りの象徴です。
- 先住民マオリの国旗「ティノ・ランガティラタンガ」 ニュージーランドには、政府が公式に認めているもう一つの重要な旗があります。それは先住民マオリの旗「ティノ・ランガティラタンガ(黒・白・赤でシダの渦巻き模様を描いたもの)」です。建国記念日である「ワイタンギ・デー」などには、現在の国旗と並んで同じ高さで掲揚されることが推奨されています。
以上のように、ニュージーランドの国旗は、イギリスとの歴史的な絆と南半球の大自然を象徴する一方で、「自分たちの真のアイデンティティとは何か?」を国民全体で真剣に見つめ直すきっかけとなった、非常にドラマチックな背景を持つ国旗なのです。
素材について
ニュージーランドの国旗、通称「ニュージーランド・エンサイン(New Zealand Ensign)」について、そのデザインの意味、オーストラリアとの激しい「パクリ論争」、そして「国費を約20億円も投じて国旗を変えようとした歴史的な国民投票」まで、詳しく解説します。イギリスの伝統を受け継ぎつつも、南半球の美しい星空を刻んだこの旗は、近年その存在意義そのものが国を二分する大議論の的となりました。
1. デザインと形の意味:南半球の赤い星
深い青色の背景(ブルー・エンサイン)に、左上にイギリス国旗、右側に南十字星が描かれています。
- ブルー(背景の青色) ニュージーランドを囲む 「美しく青い海」 と、澄み渡る 「青空」 を表しています。
- 左上の「ユニオンジャック」 かつてイギリスの植民地であったという歴史的な結びつきと、現在もイギリス連邦(コモンウェルス)の一員であることを示しています。
- 右側の「南十字星(サザンクロス)」
南半球でしか見ることができない星座であり、ニュージーランドが 「南太平洋に位置する国」 であることを象徴しています。
- 星の色と形:ここが非常に重要なポイントです。ニュージーランドの南十字星は、 「白いフチ取りのある、赤い五芒星(5つの角を持つ星)」 が 4つ 描かれています。これは、実際の南十字星を構成する星の中でも、特に明るい4つの星だけを抜き出したものです。
2. 国旗の歴史と由来:実はオーストラリアより「先輩」
ニュージーランドの国旗は、現在の形になるまでにいくつかの変遷を経ています。
① 最初の国旗は全く違うデザインだった(1834年) ニュージーランドがイギリスの直轄植民地になる前、先住民マオリの首長たちが集まって選んだ 「ニュージーランド連邦部族旗」 というものが存在しました。白地に赤い十字架があり、左上に青地に4つの白い星が描かれたもので、これがニュージーランド初の公認旗でした。
② 現在のデザインの誕生(1869年) 1865年、イギリス政府は植民地の船に対し「青地の旗(ブルー・エンサイン)に、その植民地独自のバッジ(紋章)をつけて掲げること」を義務付けました。最初は単に「NZ」という文字を入れていましたが、1869年に海軍将校のアルバート・マーカムの提案により、現在の「赤い南十字星」のデザインが採用されました。これが現在の国旗の直接のルーツです。
③ 正式な国旗としての制定(1902年) その後、南アフリカで起きたボーア戦争(1899年〜)にニュージーランド兵が従軍した際、この旗が愛国心のシンボルとして広く使われるようになりました。そして 1902年、「ニュージーランド・エンサイン法」が可決され、正式に国家の国旗として制定 されました。
3. オーストラリアとの「激似・パクリ論争」
オーストラリアの国旗の解説でも触れましたが、両国の国旗は世界で最も見分けがつきにくいことで有名です。
- どう見分けるか?
- ニュージーランド:星は「赤色で白フチ」「五角星」「星の数は4つ」「左下に大きな星はない」。
- オーストラリア:星は「真っ白」「七角星」「星の数は5つ(+左下に大きな星が1つ)」。
- 「パクったのはオーストラリアだ!」 2018年、ニュージーランドのウィンストン・ピーターズ首相代行(当時)が 「オーストラリアは我々の国旗をパクった。彼らはデザインを変えるべきだ」 と発言し、国際ニュースになりました。 実は、オーストラリアが現在の国旗デザインをコンペで選んだのは1901年ですが、 ニュージーランドが現在の国旗を使い始めたのは1869年、法律で国旗にしたのは1902年 です。オーストラリアが法律で今の国旗を正式に確定させたのは1954年であるため、「歴史的には我々の方がずっと先だ!」というニュージーランド側の強いプライドがあります。
4. 巨額の費用をかけた「国旗変更・国民投票」(2015〜2016年)
ニュージーランドの国旗を語る上で絶対に外せないのが、近年起きた 「国旗を変えるべきか否か」を問う国家を挙げた大論争 です。
① なぜ変えようとしたのか? 当時のジョン・キー首相が、以下の理由から国旗の変更を強く推し進めました。
- オーストラリア国旗と似すぎていて、国際社会で間違えられすぎる。
- 「ユニオンジャック」は過去のイギリス植民地支配の象徴であり、多文化社会であり先住民マオリの歴史を持つ現代のニュージーランドにふさわしくない。
- ニュージーランドの真のシンボルである 「シルバー・ファーン(銀シダ)」 を国旗にすべきだ。
② 新デザインの公募と熱狂 政府は約2,600万NZドル(当時のレートで約20億円)もの国費を投じて、新しい国旗のデザインコンペと2回の国民投票を実施しました。 全国から1万点以上のデザインが寄せられ、「目からビームを出すキウイ鳥(キーウィ)」などのネットミーム的な面白デザインも話題になりました。
③ 国民投票の結果:現状維持 最終決戦は、「現在の国旗」vs「シルバー・ファーンと南十字星を描いた新デザイン(黒・白・青)」の一騎打ちとなりました。 結果は、 「変更反対(現在の国旗を維持)」が56.6% 、「変更賛成」が43.2%となり、 現在の国旗が存続することになりました。 「かつての戦争でこの旗の下で戦って死んでいった兵士への冒涜だ」という退役軍人たちの強い反対や、「歴史的なシンボルを変える必要はない」という保守的な意見、そして「変更にかかる莫大なコストの無駄遣い」への批判が上回ったためです。
5. 知っておきたい豆知識(トリビア)
- スポーツ界の国旗「シルバー・ファーン」 ラグビーの最強代表チーム「オールブラックス」のユニフォームで有名な、 黒地に白いシダの葉(シルバー・ファーン) を描いた旗は、スポーツの応援などで「事実上のもう一つの国旗」としてニュージーランド国民に熱狂的に愛されています。真っ黒な旗は強さと誇りの象徴です。
- 先住民マオリの国旗「ティノ・ランガティラタンガ」 ニュージーランドには、政府が公式に認めているもう一つの重要な旗があります。それは先住民マオリの旗「ティノ・ランガティラタンガ(黒・白・赤でシダの渦巻き模様を描いたもの)」です。建国記念日である「ワイタンギ・デー」などには、現在の国旗と並んで同じ高さで掲揚されることが推奨されています。
以上のように、ニュージーランドの国旗は、イギリスとの歴史的な絆と南半球の大自然を象徴する一方で、「自分たちの真のアイデンティティとは何か?」を国民全体で真剣に見つめ直すきっかけとなった、非常にドラマチックな背景を持つ国旗なのです。
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詳細データ・リンク
| 素材名 | ニュージーランドの国旗 |
|---|---|
| キーワード | ニュージーランド, 国旗 |
| 制作者 (Creator) | 3kaku-K |
| 著作権 (Copyright) | 3kaku-K |
| クレジット (Credit) | freesozai.jp |
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