カナダの国旗について
カナダの国旗、通称「メイプルリーフ旗(The Maple Leaf)」(フランス語では「一葉旗」を意味する)について、そのデザインの意味、誕生にまつわる激しい政治論争、そして「葉っぱのギザギザの数」に隠された驚きの科学的理由まで詳しく解説します。現在の国旗が制定されたのは1965年と比較的最近ですが、その洗練されたデザインは世界で最も美しく、認知度の高い国旗の一つとして愛されています。
1. デザインと色の意味
赤と白の縦帯の中央に、赤いサトウカエデ(メイプル)の葉が描かれた非常にシンプルなデザインです。
- 赤と白(国の公式カラー)
1921年にイギリス国王ジョージ5世によって定められたカナダの公式カラーです。
- 赤:イギリスのシンボルである「聖ジョージの十字架」に由来。
- 白:フランスの伝統的な王室のシンボルカラーに由来。 カナダの開拓において中心的な役割を果たした イギリスとフランス系移民の歴史的背景と和解 を表しています。
- メイプルリーフ(サトウカエデの葉) カナダの厳しい自然環境に耐え抜く強さと、豊かな自然の象徴です。実は国旗に採用されるずっと前(18世紀頃)から、カナダの先住民や移民たちの間で「カナダのシンボル」として親しまれており、硬貨や軍隊のバッジなどにも使われていました。
- 独自の比率「カナディアン・ペール」 カナダ国旗の縦横の比率は「1:2」と横長です。 一番の特徴は、赤・白・赤の縦帯の比率が「1:2:1」となっており、 中央の白い部分が完全に「正方形」 になっていることです。国旗のデザイン学(旗章学)において、このカナダ独自の斬新なレイアウトは 「カナディアン・ペール」 と呼ばれ、後に他の国や地域の旗にも影響を与えました。
2. メイプルリーフ旗の歴史:血の流れない「国旗大論争」
かつてカナダはイギリスの自治領であったため、長い間「ユニオンジャック(イギリス国旗)」が左上に入った「カナダ・レッド・エンサイン」という旗を使っていました。これが現在のデザインに変わるまでには、国を二分する大論争がありました。
① 独自の国旗が必要になった決定的な事件(1956年) エジプトで起きた「スエズ危機」の際、カナダのレスター・B・ピアソン(のちの首相)は国連平和維持軍の派遣を提案し、見事紛争を調停しました(この功績でノーベル平和賞を受賞)。 しかし、平和維持軍としてエジプトに入ろうとしたカナダ軍に対し、エジプト側は 「カナダの旗には、敵国であるイギリスのユニオンジャックが入っているから受け入れられない!」 と反発しました。この悔しい経験から、ピアソンは「カナダには、イギリスとは違う独自の国旗が絶対に必要だ」と痛感します。
② 国旗大論争(1964年) 首相となったピアソンは「ユニオンジャックを外して、メイプルリーフの旗を作ろう」と提案しますが、保守派(イギリス系移民など)から「伝統への冒涜だ!」「ユニオンジャックを残せ!」と猛烈な反対を受けます。議会では何ヶ月にもわたって怒号が飛び交う「国旗大論争(Great Flag Debate)」が繰り広げられました。
③ 歴史学者のスケッチから誕生 数千ものデザイン案が寄せられる中、最終的に採用されたのは、王立軍事大学の歴史学教授であった ジョージ・スタンリー が提案したデザインでした。 彼は、大学の旗(赤・白・赤の縦縞)を見てひらめき、「中央の正方形に、カナダの象徴である赤いメイプルリーフを一つだけ置くのが最も美しい」と提案しました。これが議会で承認され、1965年2月15日に現在の国旗が正式に掲揚されました。
3. 「11の角(カド)」の秘密と風洞実験
カナダ国旗に描かれているメイプルリーフには、ギザギザした角(ポイント)が 「11個」 あります。この数について、非常によくある勘違いと、驚くべき真実があります。
- ✖ よくある勘違い(俗説) 「11の角は、カナダの10の州と1つの準州を表している」(アメリカやオーストラリアの国旗からの連想)。 実はこれ、完全に間違いです。 現在のカナダは10の州と3つの準州で構成されており、数も合いません。角の数に政治的な意味は一切ありません。
- 〇 驚きの真実:「風洞実験」で決まった デザインを決める際、本物のサトウカエデの葉(角が20個以上ある複雑な形)をそのまま旗に描くと、遠くから見たときや風にはためいた時に、 「ただの赤いモヤモヤした塊」 に見えてしまうことが分かりました。 そこで、政府のデザインチームは、風洞(人工的に強い風を起こすトンネル)の中に様々なギザギザの数の旗を入れて、 「強い風でなためいていても、最もクッキリとカエデの葉に見える形」 を科学的にテストしました。 その結果、角の数を極限まで減らし、線を直線的にデフォルメした 「11個の角」 のデザインが、最も視認性が高く美しいという結論に至ったのです。
4. 知っておきたい豆知識(トリビア)
- ボツになった「ピアソン・ペナント」 国旗論争の際、ピアソン首相自身が強く推していたデザイン案がありました。それは「両端が青色(太平洋と大西洋を表す)で、中央の白地に3枚の赤いカエデの葉が描かれている」というものでした。しかし「青色が入ると野暮ったい」「3枚の葉は散漫だ」と反対され、幻の国旗(通称:ピアソン・ペナント)となりました。
- 国旗の日(2月15日) 新しい国旗が初めて国会議事堂に掲げられた1965年2月15日を記念して、カナダでは毎年2月15日を「カナダ国旗の日(National Flag of Canada Day)」として祝っています。
- バックパッカーの「お守り」 かつて、アメリカ人が海外(特にヨーロッパや中東など、アメリカの外交政策に反発がある地域)を旅行する際、トラブルを避けるために わざと自分のリュックにカナダ国旗のワッペンを縫い付けて「平和で無害なカナダ人のフリをする」 ということがよく行われました。 これは「メイプルリーフ=平和的で友好的なカナダ」というイメージが世界中に定着していることの裏返しでもあります。
以上のように、カナダの「メイプルリーフ旗」は、イギリスの呪縛から抜け出し「独立した平和国家」としてのアイデンティティを確立するための激しい政治ドラマと、視覚効果を極限まで計算した科学的なアプローチによって生み出された、傑作デザインの国旗なのです。
素材について
カナダの国旗、通称「メイプルリーフ旗(The Maple Leaf)」(フランス語では「一葉旗」を意味する)について、そのデザインの意味、誕生にまつわる激しい政治論争、そして「葉っぱのギザギザの数」に隠された驚きの科学的理由まで詳しく解説します。現在の国旗が制定されたのは1965年と比較的最近ですが、その洗練されたデザインは世界で最も美しく、認知度の高い国旗の一つとして愛されています。
1. デザインと色の意味
赤と白の縦帯の中央に、赤いサトウカエデ(メイプル)の葉が描かれた非常にシンプルなデザインです。
- 赤と白(国の公式カラー)
1921年にイギリス国王ジョージ5世によって定められたカナダの公式カラーです。
- 赤:イギリスのシンボルである「聖ジョージの十字架」に由来。
- 白:フランスの伝統的な王室のシンボルカラーに由来。 カナダの開拓において中心的な役割を果たした イギリスとフランス系移民の歴史的背景と和解 を表しています。
- メイプルリーフ(サトウカエデの葉) カナダの厳しい自然環境に耐え抜く強さと、豊かな自然の象徴です。実は国旗に採用されるずっと前(18世紀頃)から、カナダの先住民や移民たちの間で「カナダのシンボル」として親しまれており、硬貨や軍隊のバッジなどにも使われていました。
- 独自の比率「カナディアン・ペール」 カナダ国旗の縦横の比率は「1:2」と横長です。 一番の特徴は、赤・白・赤の縦帯の比率が「1:2:1」となっており、 中央の白い部分が完全に「正方形」 になっていることです。国旗のデザイン学(旗章学)において、このカナダ独自の斬新なレイアウトは 「カナディアン・ペール」 と呼ばれ、後に他の国や地域の旗にも影響を与えました。
2. メイプルリーフ旗の歴史:血の流れない「国旗大論争」
かつてカナダはイギリスの自治領であったため、長い間「ユニオンジャック(イギリス国旗)」が左上に入った「カナダ・レッド・エンサイン」という旗を使っていました。これが現在のデザインに変わるまでには、国を二分する大論争がありました。
① 独自の国旗が必要になった決定的な事件(1956年) エジプトで起きた「スエズ危機」の際、カナダのレスター・B・ピアソン(のちの首相)は国連平和維持軍の派遣を提案し、見事紛争を調停しました(この功績でノーベル平和賞を受賞)。 しかし、平和維持軍としてエジプトに入ろうとしたカナダ軍に対し、エジプト側は 「カナダの旗には、敵国であるイギリスのユニオンジャックが入っているから受け入れられない!」 と反発しました。この悔しい経験から、ピアソンは「カナダには、イギリスとは違う独自の国旗が絶対に必要だ」と痛感します。
② 国旗大論争(1964年) 首相となったピアソンは「ユニオンジャックを外して、メイプルリーフの旗を作ろう」と提案しますが、保守派(イギリス系移民など)から「伝統への冒涜だ!」「ユニオンジャックを残せ!」と猛烈な反対を受けます。議会では何ヶ月にもわたって怒号が飛び交う「国旗大論争(Great Flag Debate)」が繰り広げられました。
③ 歴史学者のスケッチから誕生 数千ものデザイン案が寄せられる中、最終的に採用されたのは、王立軍事大学の歴史学教授であった ジョージ・スタンリー が提案したデザインでした。 彼は、大学の旗(赤・白・赤の縦縞)を見てひらめき、「中央の正方形に、カナダの象徴である赤いメイプルリーフを一つだけ置くのが最も美しい」と提案しました。これが議会で承認され、1965年2月15日に現在の国旗が正式に掲揚されました。
3. 「11の角(カド)」の秘密と風洞実験
カナダ国旗に描かれているメイプルリーフには、ギザギザした角(ポイント)が 「11個」 あります。この数について、非常によくある勘違いと、驚くべき真実があります。
- ✖ よくある勘違い(俗説) 「11の角は、カナダの10の州と1つの準州を表している」(アメリカやオーストラリアの国旗からの連想)。 実はこれ、完全に間違いです。 現在のカナダは10の州と3つの準州で構成されており、数も合いません。角の数に政治的な意味は一切ありません。
- 〇 驚きの真実:「風洞実験」で決まった デザインを決める際、本物のサトウカエデの葉(角が20個以上ある複雑な形)をそのまま旗に描くと、遠くから見たときや風にはためいた時に、 「ただの赤いモヤモヤした塊」 に見えてしまうことが分かりました。 そこで、政府のデザインチームは、風洞(人工的に強い風を起こすトンネル)の中に様々なギザギザの数の旗を入れて、 「強い風でなためいていても、最もクッキリとカエデの葉に見える形」 を科学的にテストしました。 その結果、角の数を極限まで減らし、線を直線的にデフォルメした 「11個の角」 のデザインが、最も視認性が高く美しいという結論に至ったのです。
4. 知っておきたい豆知識(トリビア)
- ボツになった「ピアソン・ペナント」 国旗論争の際、ピアソン首相自身が強く推していたデザイン案がありました。それは「両端が青色(太平洋と大西洋を表す)で、中央の白地に3枚の赤いカエデの葉が描かれている」というものでした。しかし「青色が入ると野暮ったい」「3枚の葉は散漫だ」と反対され、幻の国旗(通称:ピアソン・ペナント)となりました。
- 国旗の日(2月15日) 新しい国旗が初めて国会議事堂に掲げられた1965年2月15日を記念して、カナダでは毎年2月15日を「カナダ国旗の日(National Flag of Canada Day)」として祝っています。
- バックパッカーの「お守り」 かつて、アメリカ人が海外(特にヨーロッパや中東など、アメリカの外交政策に反発がある地域)を旅行する際、トラブルを避けるために わざと自分のリュックにカナダ国旗のワッペンを縫い付けて「平和で無害なカナダ人のフリをする」 ということがよく行われました。 これは「メイプルリーフ=平和的で友好的なカナダ」というイメージが世界中に定着していることの裏返しでもあります。
以上のように、カナダの「メイプルリーフ旗」は、イギリスの呪縛から抜け出し「独立した平和国家」としてのアイデンティティを確立するための激しい政治ドラマと、視覚効果を極限まで計算した科学的なアプローチによって生み出された、傑作デザインの国旗なのです。
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詳細データ・リンク
| 素材名 | カナダの国旗 |
|---|---|
| キーワード | カナダ, 国旗 |
| 制作者 (Creator) | 3kaku-K |
| 著作権 (Copyright) | 3kaku-K |
| クレジット (Credit) | freesozai.jp |
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