香港の旗について
香港の旗、正式名称「中華人民共和国香港特別行政区区旗」について、その美しい花のデザインに込められた「一国二制度」の象徴、イギリス統治時代からの歴史的転換、そして近年の民主化デモで生まれた「黒い旗」といった現代の複雑な事情まで、とにかく詳しく解説します。一見すると華やかで美しい花のマークですが、そこには中国という大国と、香港という特別な地域の極めて繊細な政治的バランスが緻密に描かれています。
1. デザインと色の意味:「一国二制度」の視覚化
赤地に白い 「バウヒニア(洋紫荊:ようしけい)」 の花が描かれています。このデザインは、香港に適用されている「一国二制度(1つの国家の中に、社会主義と資本主義の2つの制度が共存する)」を視覚的に表現したものです。
- 赤色(背景)と白色(花)
- 赤:祖国である 「中華人民共和国(中国)」 を象徴しています。使われている赤色は、中国の国旗(五星紅旗)と全く同じ色と法律で規定されており、祝祭や情熱を意味します。
- 白: 「香港」 の純潔さや平和を象徴しています。
- 一国二制度:この「赤と白のコントラスト」そのものが、中国と香港という2つの異なる制度が調和して共存している様子(一国二制度)を表しています。
- バウヒニア(洋紫荊)の花 19世紀末に香港島で初めて発見された固有種の植物で、1965年から香港の「市花」として親しまれている香港の絶対的なシンボルです。 5枚の花びらがプロペラのように時計回りに少し傾いて配置されており、これは香港の 「絶え間ない発展とダイナミズム」 を表しています。
- 5つの「赤い星」 白い花びらをよく見ると、1枚につき1つずつ、計5つの 「赤い星と雄しべの線」 が描かれています。 これは中国の国旗にある5つの星を意味しており、 「香港の心は常に祖国(中国)と結びついている」「香港が中国の不可分の一部である」 という強い政治的メッセージが込められています。
2. 香港旗の歴史と由来:建築家が公園でひらめいた
香港は長らくイギリスの植民地でしたが、1997年の中国返還に向けて新しい旗を作ることになりました。
① イギリス時代の旗(ブルー・エンサイン) 1997年まで、香港ではイギリスの植民地であることを示す旗が使われていました。青地の左上にユニオンジャックがあり、右側には「阿片(アヘン)戦争時の阿片船」「イギリスのライオンと中国の竜」が描かれた香港の紋章が配置されていました。
② 7,000件以上のデザイン公募と「全ボツ」(1987年) 返還の10年前である1987年、中国政府は世界中から新しい香港の旗のデザインを公募しました。集まったデザイン案は7,147点にものぼりましたが、審査委員会は「どれも採用基準(一国二制度を表現しつつ、中国らしさと香港らしさがあること)に達していない」として、 なんとすべての応募案を却下してしまいました。
③ 審査員自らがデザインを考案 困り果てた審査委員会は、審査員の一人であった香港の著名な建築家・何弢(ホー・タオ / Tao Ho)ら3名に新しいデザインの作成を依頼しました。 悩んでいた何弢は、ある日公園を散歩している時、地面に落ちていた 一枚のバウヒニアの花 を拾い上げました。その花の左右対称の美しさと、香港固有の花であるという事実にインスピレーションを受け、彼は赤い背景に白いバウヒニアを配置し、さらに中国を象徴する星を組み込むデザインを完成させました。 これが1990年に正式に承認され、1997年7月1日の返還式典で初めて世界に向けて掲揚されました。
3. バウヒニアに隠された皮肉な植物学的真実
香港のシンボルとして選ばれたバウヒニア(バウヒニア・ブラケアーナ)ですが、実は植物学的に不稔性という特徴を持っています。
つまり、異なる2つの種が偶然交雑して生まれた植物であるため、 種子を作ることができず、自力で繁殖することができません。 現在香港などで咲いているバウヒニアは、すべて「挿し木」や「接ぎ木」などの人工的な方法で増やされたクローンです。 この「自ら種を残せない=根付かない・一代限り」という生態から、返還当時の香港市民やメディアの間では 「将来の香港の自治(一国二制度)が長くは続かず、途絶えてしまうことの不吉な暗示ではないか」 と皮肉めいて語られることがありました。
4. 知っておきたい豆知識(現代のデモとタブー)
- 抗議デモで生まれた「黒い洋紫荊旗(ブラックスター)」 2019年に香港で起きた大規模な「逃亡犯条例改正反対デモ(民主化デモ)」の際、若者たちの間で独自の旗が作られました。 それは 背景の「赤」を真っ黒(黒地)に変え、花びらの中の「赤い星」を取り除き、さらに花びらの先端が枯れて血を流しているように見せた「黒洋紫荊旗(Black Bauhinia flag)」 です。 これは「一国二制度は死んだ」「中国(赤い星と背景)の支配に対する抵抗」を強烈に示すシンボルとしてデモの最前線で掲げられ、世界中のメディアで報じられました。
- 異常に厳しい「国旗・区旗の侮辱罪」 香港では「国旗及び国章条例」ならびに「区旗及び区章条例」が年々厳格化されています。 現在、香港の旗や中国の国旗を「燃やす、破る、汚す、踏みつける」といった物理的な破壊だけでなく、 インターネット上で旗を加工した画像(先述の黒い旗など)を拡散したり、逆さまに掲示したりする行為も「国家への重大な侮辱」とみなされ、最大で禁錮3年の実刑判決を受ける重罪 となっています。
- オリンピックでの表記 香港は中国の一部ですが、オリンピックなどの国際スポーツ大会や、WTO(世界貿易機関)などには独自のチーム・メンバーとして参加する権利を持っています。そのため、大会などでは「Hong Kong, China(中国香港)」という名称とともに、このバウヒニアの旗が掲げられます(表彰式で金メダルを獲った際、掲げられるのは香港の旗ですが、流れる国歌は中国国歌の「義勇軍進行曲」です)。
以上のように、香港の旗は「一国二制度の美しい調和」を願ってデザインされた見事な傑作ですが、近年の激動の政治情勢により、その「赤色」と「星」が持つ意味合いが非常に重く、時に市民の抵抗の対象にもなるという、極めて現代的な緊張感をはらんだ旗となっています。
素材について
香港の旗、正式名称「中華人民共和国香港特別行政区区旗」について、その美しい花のデザインに込められた「一国二制度」の象徴、イギリス統治時代からの歴史的転換、そして近年の民主化デモで生まれた「黒い旗」といった現代の複雑な事情まで、とにかく詳しく解説します。一見すると華やかで美しい花のマークですが、そこには中国という大国と、香港という特別な地域の極めて繊細な政治的バランスが緻密に描かれています。
1. デザインと色の意味:「一国二制度」の視覚化
赤地に白い 「バウヒニア(洋紫荊:ようしけい)」 の花が描かれています。このデザインは、香港に適用されている「一国二制度(1つの国家の中に、社会主義と資本主義の2つの制度が共存する)」を視覚的に表現したものです。
- 赤色(背景)と白色(花)
- 赤:祖国である 「中華人民共和国(中国)」 を象徴しています。使われている赤色は、中国の国旗(五星紅旗)と全く同じ色と法律で規定されており、祝祭や情熱を意味します。
- 白: 「香港」 の純潔さや平和を象徴しています。
- 一国二制度:この「赤と白のコントラスト」そのものが、中国と香港という2つの異なる制度が調和して共存している様子(一国二制度)を表しています。
- バウヒニア(洋紫荊)の花 19世紀末に香港島で初めて発見された固有種の植物で、1965年から香港の「市花」として親しまれている香港の絶対的なシンボルです。 5枚の花びらがプロペラのように時計回りに少し傾いて配置されており、これは香港の 「絶え間ない発展とダイナミズム」 を表しています。
- 5つの「赤い星」 白い花びらをよく見ると、1枚につき1つずつ、計5つの 「赤い星と雄しべの線」 が描かれています。 これは中国の国旗にある5つの星を意味しており、 「香港の心は常に祖国(中国)と結びついている」「香港が中国の不可分の一部である」 という強い政治的メッセージが込められています。
2. 香港旗の歴史と由来:建築家が公園でひらめいた
香港は長らくイギリスの植民地でしたが、1997年の中国返還に向けて新しい旗を作ることになりました。
① イギリス時代の旗(ブルー・エンサイン) 1997年まで、香港ではイギリスの植民地であることを示す旗が使われていました。青地の左上にユニオンジャックがあり、右側には「阿片(アヘン)戦争時の阿片船」「イギリスのライオンと中国の竜」が描かれた香港の紋章が配置されていました。
② 7,000件以上のデザイン公募と「全ボツ」(1987年) 返還の10年前である1987年、中国政府は世界中から新しい香港の旗のデザインを公募しました。集まったデザイン案は7,147点にものぼりましたが、審査委員会は「どれも採用基準(一国二制度を表現しつつ、中国らしさと香港らしさがあること)に達していない」として、 なんとすべての応募案を却下してしまいました。
③ 審査員自らがデザインを考案 困り果てた審査委員会は、審査員の一人であった香港の著名な建築家・何弢(ホー・タオ / Tao Ho)ら3名に新しいデザインの作成を依頼しました。 悩んでいた何弢は、ある日公園を散歩している時、地面に落ちていた 一枚のバウヒニアの花 を拾い上げました。その花の左右対称の美しさと、香港固有の花であるという事実にインスピレーションを受け、彼は赤い背景に白いバウヒニアを配置し、さらに中国を象徴する星を組み込むデザインを完成させました。 これが1990年に正式に承認され、1997年7月1日の返還式典で初めて世界に向けて掲揚されました。
3. バウヒニアに隠された皮肉な植物学的真実
香港のシンボルとして選ばれたバウヒニア(バウヒニア・ブラケアーナ)ですが、実は植物学的に不稔性という特徴を持っています。
つまり、異なる2つの種が偶然交雑して生まれた植物であるため、 種子を作ることができず、自力で繁殖することができません。 現在香港などで咲いているバウヒニアは、すべて「挿し木」や「接ぎ木」などの人工的な方法で増やされたクローンです。 この「自ら種を残せない=根付かない・一代限り」という生態から、返還当時の香港市民やメディアの間では 「将来の香港の自治(一国二制度)が長くは続かず、途絶えてしまうことの不吉な暗示ではないか」 と皮肉めいて語られることがありました。
4. 知っておきたい豆知識(現代のデモとタブー)
- 抗議デモで生まれた「黒い洋紫荊旗(ブラックスター)」 2019年に香港で起きた大規模な「逃亡犯条例改正反対デモ(民主化デモ)」の際、若者たちの間で独自の旗が作られました。 それは 背景の「赤」を真っ黒(黒地)に変え、花びらの中の「赤い星」を取り除き、さらに花びらの先端が枯れて血を流しているように見せた「黒洋紫荊旗(Black Bauhinia flag)」 です。 これは「一国二制度は死んだ」「中国(赤い星と背景)の支配に対する抵抗」を強烈に示すシンボルとしてデモの最前線で掲げられ、世界中のメディアで報じられました。
- 異常に厳しい「国旗・区旗の侮辱罪」 香港では「国旗及び国章条例」ならびに「区旗及び区章条例」が年々厳格化されています。 現在、香港の旗や中国の国旗を「燃やす、破る、汚す、踏みつける」といった物理的な破壊だけでなく、 インターネット上で旗を加工した画像(先述の黒い旗など)を拡散したり、逆さまに掲示したりする行為も「国家への重大な侮辱」とみなされ、最大で禁錮3年の実刑判決を受ける重罪 となっています。
- オリンピックでの表記 香港は中国の一部ですが、オリンピックなどの国際スポーツ大会や、WTO(世界貿易機関)などには独自のチーム・メンバーとして参加する権利を持っています。そのため、大会などでは「Hong Kong, China(中国香港)」という名称とともに、このバウヒニアの旗が掲げられます(表彰式で金メダルを獲った際、掲げられるのは香港の旗ですが、流れる国歌は中国国歌の「義勇軍進行曲」です)。
以上のように、香港の旗は「一国二制度の美しい調和」を願ってデザインされた見事な傑作ですが、近年の激動の政治情勢により、その「赤色」と「星」が持つ意味合いが非常に重く、時に市民の抵抗の対象にもなるという、極めて現代的な緊張感をはらんだ旗となっています。
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詳細データ・リンク
| 素材名 | 香港の旗 |
|---|---|
| キーワード | 香港, 旗 |
| 制作者 (Creator) | 3kaku-K |
| 著作権 (Copyright) | 3kaku-K |
| クレジット (Credit) | freesozai.jp |
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