ベトナムの国旗について
ベトナムの国旗、通称「金星紅旗(きんせいこうき / Cờ đỏ sao vàng:金色の星の赤い旗)」について、そのデザインの意味、過酷な独立戦争の歴史、そして「実は途中で星の形が変わっている」という意外な事実まで詳しく解説します。一見するとシンプルな「赤地に星」のデザインですが、この旗はベトナム人民の血と涙にまみれた独立闘争の歴史そのものを体現しています。
1. デザインと形の意味
真っ赤な背景の中央に、大きな黄色の五芒星(星マーク)が一つ配置されています。このシンプルかつ力強いデザインには、社会主義国家としての明確なメッセージが込められています。
- 赤色(地の色) フランスの植民地支配や、その後のベトナム戦争など、度重なる 「独立と自由を求める闘争で流された人民の血」そして「革命」 を象徴しています。
- 黄色(星の色) ベトナム民族の伝統的なシンボルカラーであり、 「ベトナム人の肌の色」あるいは国家を導く「輝かしい魂(未来)」 を表しているとされます。
- 星の「5つの角」の深い意味
ここが最も特徴的な部分です。星の5つの先端(角)は、単なる星の形ではなく、国家を建設し、革命を支えるために団結した 「5つの人民の階層」 を表しています。
- 知識人(Sĩ:士)
- 農民(Nông:農)
- 労働者(Công:工)
- 商人(Thương:商)
- 兵士(Binh:兵) 古くからの身分制度「士農工商」に、革命に不可欠な「兵士」を加えた5つの階級が、中心に向かって固く団結している姿を表現しています。
2. 金星紅旗の歴史と由来
この国旗は、第二次世界大戦中のフランスに対する独立運動の中で生まれました。
① 獄中で生まれたデザイン(1940年) 1940年、フランスの植民地支配に抗議する「南圻(なんき)蜂起」という武装蜂起が南ベトナムで起こりました。この時、初めて現在の国旗の原型が掲げられました。 デザインを考案したのは、独立運動家であった グエン・フー・ティエン(Nguyễn Hữu Tiến) だと長らく言われてきました(※近年の研究ではレ・クアン・ソという別の運動家が有力だとする説もあります)。 彼は後にフランス軍に捕らえられ処刑されてしまいますが、彼が残した「赤い血と黄色い肌の象徴」というデザインは、その後の独立運動のシンボルとなりました。
② 北ベトナムの国旗へ(1945年) 1945年、ホー・チ・ミンが率いる「ベトナム独立同盟(ベトミン)」が八月革命を起こし、「ベトナム民主共和国(北ベトナム)」の独立を宣言しました。この時、金星紅旗が正式に国旗として採用されました。
③ 南北統一による「全ベトナムの国旗」へ(1976年) その後、アメリカが介入する泥沼の「ベトナム戦争」が勃発します。北ベトナム(金星紅旗)と、アメリカが支援する南ベトナム(別の国旗)が激しく戦いました。 1975年に北ベトナム軍が南の首都サイゴンを陥落させて勝利し、1976年に南北ベトナムが統一され「ベトナム社会主義共和国」が誕生しました。これにより、北ベトナムの旗であった「金星紅旗」が、現在の全ベトナムの国旗として正式に引き継がれました。
3. 星の形が「ぽっちゃり」から「シャープ」に変わった理由
実は、1945年の建国当初に使われていた金星紅旗と、現在の金星紅旗では 「星の形(デザイン)」が異なります 。
- 旧デザイン(1945年〜1955年):当初の星は、中心の面積が広く、角が短い 「少しふっくら(ぽっちゃり)した星」 でした。
- 新デザイン(1955年〜現在):1955年に法律が改正され、星の角が直線的で鋭く長い、現在の 「シャープな星」 に変更されました。
- 変更の理由:旧デザインは手描きや手作りをする際に人によって形がバラバラになりやすく、バランスをとるのが難しかったためです。「誰もが定規を使って、幾何学的に正確かつ美しく描けるように」という実用的な理由から、現在のような直線を基調としたスッキリとした星の形に修正・統一されました。
4. 知っておきたい豆知識(タブーと政治的背景)
- 中国の「五星紅旗」との違い 中国の国旗(赤地に黄色い星が5つ)と色使いが全く同じですが、意味合いが少し異なります。中国は「大きな星=共産党、小さな星=4つの階級」を表していますが、ベトナムは「1つの星の5つの角=5つの階級」を表しています。
- 絶対に間違えてはいけない「もう一つのベトナム国旗」 現在のベトナム国内において 絶対に掲げたり描いたりしてはいけない「タブーの旗」 が存在します。それは、ベトナム戦争で消滅した 「南ベトナム(ベトナム共和国)」の国旗(黄色の背景に3本の赤い横線が入った『黄底三線旗』) です。 現在のベトナム政府にとって、この旗は「敗北した反逆者・傀儡政権の象徴」であり、国内で掲示すると国家反逆罪に問われる可能性があります。
- 海外での「旗の対立」 しかし、ベトナム戦争後にボートピープル(難民)としてアメリカやオーストラリアなどに逃れた南ベトナム系の人々のコミュニティでは、現在でもこの「黄色に3本赤線の旗」を自分たちのルーツ(自由ベトナム)の象徴として大切に掲げています。 そのため、海外のベトナム人街(リトル・サイゴンなど)に行くと、現在の赤と星の国旗ではなく、旧南ベトナムの黄色い旗がはためいているという、歴史の複雑さを見ることができます。
以上のように、ベトナムの国旗「金星紅旗」は、国民が団結して血みどろの独立戦争を勝ち抜いた誇り高きシンボルであると同時に、現在でも続く歴史的・政治的な対立の背景を色濃く反映している旗なのです。
素材について
ベトナムの国旗、通称「金星紅旗(きんせいこうき / Cờ đỏ sao vàng:金色の星の赤い旗)」について、そのデザインの意味、過酷な独立戦争の歴史、そして「実は途中で星の形が変わっている」という意外な事実まで詳しく解説します。一見するとシンプルな「赤地に星」のデザインですが、この旗はベトナム人民の血と涙にまみれた独立闘争の歴史そのものを体現しています。
1. デザインと形の意味
真っ赤な背景の中央に、大きな黄色の五芒星(星マーク)が一つ配置されています。このシンプルかつ力強いデザインには、社会主義国家としての明確なメッセージが込められています。
- 赤色(地の色) フランスの植民地支配や、その後のベトナム戦争など、度重なる 「独立と自由を求める闘争で流された人民の血」そして「革命」 を象徴しています。
- 黄色(星の色) ベトナム民族の伝統的なシンボルカラーであり、 「ベトナム人の肌の色」あるいは国家を導く「輝かしい魂(未来)」 を表しているとされます。
- 星の「5つの角」の深い意味
ここが最も特徴的な部分です。星の5つの先端(角)は、単なる星の形ではなく、国家を建設し、革命を支えるために団結した 「5つの人民の階層」 を表しています。
- 知識人(Sĩ:士)
- 農民(Nông:農)
- 労働者(Công:工)
- 商人(Thương:商)
- 兵士(Binh:兵) 古くからの身分制度「士農工商」に、革命に不可欠な「兵士」を加えた5つの階級が、中心に向かって固く団結している姿を表現しています。
2. 金星紅旗の歴史と由来
この国旗は、第二次世界大戦中のフランスに対する独立運動の中で生まれました。
① 獄中で生まれたデザイン(1940年) 1940年、フランスの植民地支配に抗議する「南圻(なんき)蜂起」という武装蜂起が南ベトナムで起こりました。この時、初めて現在の国旗の原型が掲げられました。 デザインを考案したのは、独立運動家であった グエン・フー・ティエン(Nguyễn Hữu Tiến) だと長らく言われてきました(※近年の研究ではレ・クアン・ソという別の運動家が有力だとする説もあります)。 彼は後にフランス軍に捕らえられ処刑されてしまいますが、彼が残した「赤い血と黄色い肌の象徴」というデザインは、その後の独立運動のシンボルとなりました。
② 北ベトナムの国旗へ(1945年) 1945年、ホー・チ・ミンが率いる「ベトナム独立同盟(ベトミン)」が八月革命を起こし、「ベトナム民主共和国(北ベトナム)」の独立を宣言しました。この時、金星紅旗が正式に国旗として採用されました。
③ 南北統一による「全ベトナムの国旗」へ(1976年) その後、アメリカが介入する泥沼の「ベトナム戦争」が勃発します。北ベトナム(金星紅旗)と、アメリカが支援する南ベトナム(別の国旗)が激しく戦いました。 1975年に北ベトナム軍が南の首都サイゴンを陥落させて勝利し、1976年に南北ベトナムが統一され「ベトナム社会主義共和国」が誕生しました。これにより、北ベトナムの旗であった「金星紅旗」が、現在の全ベトナムの国旗として正式に引き継がれました。
3. 星の形が「ぽっちゃり」から「シャープ」に変わった理由
実は、1945年の建国当初に使われていた金星紅旗と、現在の金星紅旗では 「星の形(デザイン)」が異なります 。
- 旧デザイン(1945年〜1955年):当初の星は、中心の面積が広く、角が短い 「少しふっくら(ぽっちゃり)した星」 でした。
- 新デザイン(1955年〜現在):1955年に法律が改正され、星の角が直線的で鋭く長い、現在の 「シャープな星」 に変更されました。
- 変更の理由:旧デザインは手描きや手作りをする際に人によって形がバラバラになりやすく、バランスをとるのが難しかったためです。「誰もが定規を使って、幾何学的に正確かつ美しく描けるように」という実用的な理由から、現在のような直線を基調としたスッキリとした星の形に修正・統一されました。
4. 知っておきたい豆知識(タブーと政治的背景)
- 中国の「五星紅旗」との違い 中国の国旗(赤地に黄色い星が5つ)と色使いが全く同じですが、意味合いが少し異なります。中国は「大きな星=共産党、小さな星=4つの階級」を表していますが、ベトナムは「1つの星の5つの角=5つの階級」を表しています。
- 絶対に間違えてはいけない「もう一つのベトナム国旗」 現在のベトナム国内において 絶対に掲げたり描いたりしてはいけない「タブーの旗」 が存在します。それは、ベトナム戦争で消滅した 「南ベトナム(ベトナム共和国)」の国旗(黄色の背景に3本の赤い横線が入った『黄底三線旗』) です。 現在のベトナム政府にとって、この旗は「敗北した反逆者・傀儡政権の象徴」であり、国内で掲示すると国家反逆罪に問われる可能性があります。
- 海外での「旗の対立」 しかし、ベトナム戦争後にボートピープル(難民)としてアメリカやオーストラリアなどに逃れた南ベトナム系の人々のコミュニティでは、現在でもこの「黄色に3本赤線の旗」を自分たちのルーツ(自由ベトナム)の象徴として大切に掲げています。 そのため、海外のベトナム人街(リトル・サイゴンなど)に行くと、現在の赤と星の国旗ではなく、旧南ベトナムの黄色い旗がはためいているという、歴史の複雑さを見ることができます。
以上のように、ベトナムの国旗「金星紅旗」は、国民が団結して血みどろの独立戦争を勝ち抜いた誇り高きシンボルであると同時に、現在でも続く歴史的・政治的な対立の背景を色濃く反映している旗なのです。
無料ダウンロード
詳細データ・リンク
| 素材名 | ベトナムの国旗 |
|---|---|
| キーワード | ベトナム, 国旗 |
| 制作者 (Creator) | 3kaku-K |
| 著作権 (Copyright) | 3kaku-K |
| クレジット (Credit) | freesozai.jp |
| 関連リンク | 参考リンク |