タイの国旗について
タイの国旗、通称「トン・トライロング(Thong Trairong=三色旗の意味)」について、そのデザインの意味、象が描かれていた昔の国旗からの驚きの変更理由、そしてタイならではの厳格な日常のルールまで詳しく解説します。一見するとシンプルな縞模様ですが、このデザインが誕生した裏には「国際社会へのアピール」というドラマが隠されています。
1. デザインと形の意味:タイの「三位一体」
上から「赤・白・青・白・赤」の5本の横縞で構成されています。中央の青い帯だけが、他の帯の 2倍の太さ (比率は1:1:2:1:1)になっています。 この3つの色は、タイ人のアイデンティティの根幹をなす 「国家・宗教・国王」 という絶対的な3つの柱を象徴しています。
- 赤(一番外側) 「国家」 と、国家を守るために流された国民の 「血」 を表しています。
- 白(内側) タイの国教である 「上座部仏教」 の純潔さ、そして仏教の教えを表しています(タイにおいて白象が神聖な動物とされていることにも由来します)。
- 青(中央の最も太い帯) タイの 「王室(国王)」 を表しています。青が中央で一番太く、かつ白(宗教)と赤(国家)に守られるように配置されているのは、国王が国家と宗教の中心であり、それらを統合する絶対的な存在であることを意味しています。
2. トン・トライロングの歴史と由来
タイ(旧称シャム)の国旗は、もともとは全く違うデザインでした。現在の形になったのは約100年前のことです。
① かつては「赤い背景に白い象」だった アユタヤ王朝時代など、古くは無地の赤い旗が使われていましたが、19世紀半ばのラーマ4世の時代に、赤い背景の中央に 「白い象(神聖な王権の象徴)」 を大きく描いた旗が正式な国旗(トン・チャーン・プアック)として制定されました。
② ラーマ6世のショックな体験:「象が逆さま事件」(1916年) 1916年、当時の国王ラーマ6世が、洪水の被害を受けた地方を視察に訪れました。村人たちは王様を歓迎しようと、急いで国旗(白象の旗)を掲げました。 しかし、急いでいたため、なんと「象が仰向けにひっくり返った状態(上下逆さま)」で国旗を掲揚してしまったのです。王様にとって神聖な象が仰向けで足をバタバタさせているような無様な姿になっているのを見たラーマ6世は、大きなショックを受けました。
③ 「絶対に逆さまにならないデザイン」への変更 この恥ずかしい事故を二度と起こさないため、ラーマ6世は 「上下どちらから掲揚しても同じ柄になる、対称的な縞模様」 への変更を決意しました。最初は「赤・白・赤・白・赤」の縞模様が試験的に導入されました。
④ なぜ中央が「青」になったのか?(1917年) 翌1917年、ラーマ6世は中央の赤い帯を 「青」 に変更し、現在のトン・トライロングを完成させました。青色を入れたのには2つの重要な理由がありました。
- 国王の誕生色:タイには生まれた曜日ごとに「シンボルカラー」があり、ラーマ6世が生まれた金曜日の色が「青」だったため。
- 国際社会への同調:当時、第一次世界大戦の真っ只中であり、タイは連合国側として参戦していました。同盟国であるイギリス、フランス、アメリカ、ロシアなどの国旗がすべて「赤・白・青の三色」を使っていたため、これに合わせて「タイも近代的な文明国の仲間入りを果たした」と西洋諸国にアピールする外交的な狙いがありました。
3. コスタリカ国旗との「激似問題」
タイの国旗と非常に間違いやすいのが、中米の 「コスタリカの国旗」 です。 コスタリカ国旗も全く同じ「5本の縞模様」で、中央の帯が2倍の太さであることも同じです。しかし、 色の順番が完全に逆(上から青・白・赤・白・青) になっています。
- タイ:赤・白・【青】・白・赤
- コスタリカ:青・白・【赤】・白・青
並べて見ると非常に似ているため、国際イベントなどで間違えられることがしばしばあります。(※コスタリカの国旗は1848年に制定されたため、歴史的にはコスタリカの方が先輩です)。
4. 知っておきたい豆知識(トリビア・タイの日常ルール)
- 朝8時と夕方6時の「直立不動」 タイを訪れた外国人が一番驚くのがこのルールです。タイでは毎日、朝8時と夕方18時の1日2回、駅や公園、役所などの公共の場所やテレビ・ラジオで 「国歌(プレーン・チャート)」 が大音量で流され、国旗の掲揚と降納が行われます。 この音楽が鳴っている間は タイにいるすべての人は(外国人観光客であっても)その場で立ち止まり、国旗に向かって直立不動の姿勢をとらなければなりません。 歩き続けたりおしゃべりを続けたりすることは、国家への不敬とみなされるため非常に注意が必要です。
- 国旗の「色」の厳密な規格化(2017年) タイの国旗もイタリアなどと同様に、長らく「だいたい赤と白と青ならOK」という感じで、メーカーによって青が濃かったり水色に近かったりとバラバラでした。しかし、国旗制定100周年を迎えた2017年、タイ政府は国家の威信をかけて「国旗の標準色」を厳密なデジタル数値(RGBやPantoneなど)で法律で規定しました。 現在使われているのは、少し深みのある落ち着いた青と赤です。
- 王室の旗(国王旗)との使い分け タイでは国旗と同じくらい、あるいはそれ以上に 「王室の旗」 が至る所に掲げられています。街中では国旗(トン・トライロング)と並んで、国王を讃える旗がセットで掲揚されるのが一般的です。
以上のように、タイの国旗「トン・トライロング」は、国王の体験というきっかけから生まれつつも、国家・宗教・国王というタイ社会の絶対的な価値観と、近代国家として生き残るための高度な外交戦略が見事に融合したデザインなのです。
素材について
タイの国旗、通称「トン・トライロング(Thong Trairong=三色旗の意味)」について、そのデザインの意味、象が描かれていた昔の国旗からの驚きの変更理由、そしてタイならではの厳格な日常のルールまで詳しく解説します。一見するとシンプルな縞模様ですが、このデザインが誕生した裏には「国際社会へのアピール」というドラマが隠されています。
1. デザインと形の意味:タイの「三位一体」
上から「赤・白・青・白・赤」の5本の横縞で構成されています。中央の青い帯だけが、他の帯の 2倍の太さ (比率は1:1:2:1:1)になっています。 この3つの色は、タイ人のアイデンティティの根幹をなす 「国家・宗教・国王」 という絶対的な3つの柱を象徴しています。
- 赤(一番外側) 「国家」 と、国家を守るために流された国民の 「血」 を表しています。
- 白(内側) タイの国教である 「上座部仏教」 の純潔さ、そして仏教の教えを表しています(タイにおいて白象が神聖な動物とされていることにも由来します)。
- 青(中央の最も太い帯) タイの 「王室(国王)」 を表しています。青が中央で一番太く、かつ白(宗教)と赤(国家)に守られるように配置されているのは、国王が国家と宗教の中心であり、それらを統合する絶対的な存在であることを意味しています。
2. トン・トライロングの歴史と由来
タイ(旧称シャム)の国旗は、もともとは全く違うデザインでした。現在の形になったのは約100年前のことです。
① かつては「赤い背景に白い象」だった アユタヤ王朝時代など、古くは無地の赤い旗が使われていましたが、19世紀半ばのラーマ4世の時代に、赤い背景の中央に 「白い象(神聖な王権の象徴)」 を大きく描いた旗が正式な国旗(トン・チャーン・プアック)として制定されました。
② ラーマ6世のショックな体験:「象が逆さま事件」(1916年) 1916年、当時の国王ラーマ6世が、洪水の被害を受けた地方を視察に訪れました。村人たちは王様を歓迎しようと、急いで国旗(白象の旗)を掲げました。 しかし、急いでいたため、なんと「象が仰向けにひっくり返った状態(上下逆さま)」で国旗を掲揚してしまったのです。王様にとって神聖な象が仰向けで足をバタバタさせているような無様な姿になっているのを見たラーマ6世は、大きなショックを受けました。
③ 「絶対に逆さまにならないデザイン」への変更 この恥ずかしい事故を二度と起こさないため、ラーマ6世は 「上下どちらから掲揚しても同じ柄になる、対称的な縞模様」 への変更を決意しました。最初は「赤・白・赤・白・赤」の縞模様が試験的に導入されました。
④ なぜ中央が「青」になったのか?(1917年) 翌1917年、ラーマ6世は中央の赤い帯を 「青」 に変更し、現在のトン・トライロングを完成させました。青色を入れたのには2つの重要な理由がありました。
- 国王の誕生色:タイには生まれた曜日ごとに「シンボルカラー」があり、ラーマ6世が生まれた金曜日の色が「青」だったため。
- 国際社会への同調:当時、第一次世界大戦の真っ只中であり、タイは連合国側として参戦していました。同盟国であるイギリス、フランス、アメリカ、ロシアなどの国旗がすべて「赤・白・青の三色」を使っていたため、これに合わせて「タイも近代的な文明国の仲間入りを果たした」と西洋諸国にアピールする外交的な狙いがありました。
3. コスタリカ国旗との「激似問題」
タイの国旗と非常に間違いやすいのが、中米の 「コスタリカの国旗」 です。 コスタリカ国旗も全く同じ「5本の縞模様」で、中央の帯が2倍の太さであることも同じです。しかし、 色の順番が完全に逆(上から青・白・赤・白・青) になっています。
- タイ:赤・白・【青】・白・赤
- コスタリカ:青・白・【赤】・白・青
並べて見ると非常に似ているため、国際イベントなどで間違えられることがしばしばあります。(※コスタリカの国旗は1848年に制定されたため、歴史的にはコスタリカの方が先輩です)。
4. 知っておきたい豆知識(トリビア・タイの日常ルール)
- 朝8時と夕方6時の「直立不動」 タイを訪れた外国人が一番驚くのがこのルールです。タイでは毎日、朝8時と夕方18時の1日2回、駅や公園、役所などの公共の場所やテレビ・ラジオで 「国歌(プレーン・チャート)」 が大音量で流され、国旗の掲揚と降納が行われます。 この音楽が鳴っている間は タイにいるすべての人は(外国人観光客であっても)その場で立ち止まり、国旗に向かって直立不動の姿勢をとらなければなりません。 歩き続けたりおしゃべりを続けたりすることは、国家への不敬とみなされるため非常に注意が必要です。
- 国旗の「色」の厳密な規格化(2017年) タイの国旗もイタリアなどと同様に、長らく「だいたい赤と白と青ならOK」という感じで、メーカーによって青が濃かったり水色に近かったりとバラバラでした。しかし、国旗制定100周年を迎えた2017年、タイ政府は国家の威信をかけて「国旗の標準色」を厳密なデジタル数値(RGBやPantoneなど)で法律で規定しました。 現在使われているのは、少し深みのある落ち着いた青と赤です。
- 王室の旗(国王旗)との使い分け タイでは国旗と同じくらい、あるいはそれ以上に 「王室の旗」 が至る所に掲げられています。街中では国旗(トン・トライロング)と並んで、国王を讃える旗がセットで掲揚されるのが一般的です。
以上のように、タイの国旗「トン・トライロング」は、国王の体験というきっかけから生まれつつも、国家・宗教・国王というタイ社会の絶対的な価値観と、近代国家として生き残るための高度な外交戦略が見事に融合したデザインなのです。
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詳細データ・リンク
| 素材名 | タイの国旗 |
|---|---|
| キーワード | タイ, 国旗 |
| 制作者 (Creator) | 3kaku-K |
| 著作権 (Copyright) | 3kaku-K |
| クレジット (Credit) | freesozai.jp |
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